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2009年(第25回)日本国際賞受賞者決まる
『成長の限界』のデニス・メドウズ博士と
「核医学断層画像の父」デビット・クール博士の米国人科学者2名に

 

財団法人国際科学技術財団(理事長吉川弘之)は2009年(第25回)日本国際賞(Japan Prize)の受賞者2名を発表しました。今年の授賞対象2分野のうち「自然と共生する持続可能な技術社会形成」分野では、ニューハンプシャー大学システム政策学名誉教授デニス・メドウズ博士(66歳)、「医学・工学の融合における疾患への技術の展開」分野では、ミシガン大学医学部放射線医学教授 デビット・クール博士(79歳)が選ばれました。

メドウズ博士は、『成長の限界』報告を基盤とする持続可能な社会形成への貢献が認められました。同博士は、ローマクラブの「人類の危機に関するプロジェクト」の一環として研究を委嘱されたマサチューセッツ工科大学研究チームの主査として同報告書の作成に従事。1972年に発表された同報告書は、幾何級数的成長による地球資源の枯渇と環境汚染がもたらす地球の成長の限界をシステム・シミュレーション・モデルを用いて科学的に説き、地球の物理的容量と人類の発展の相克の問題を浮き彫りにし、人類が持続可能な社会への努力を始める端緒を開きました。

同博士は、その後も、同報告書の続編とも言うべき『限界を超えて』(1992年)、『成長の限界人類の選択』(2004年)を故ドネラ夫人、ヨルゲン・ランダース氏とともに出版。* 両書では、改良したモデルを用いて、地球の物理的諸制約要因が一層厳しさを増し、問題を解決する時間的余裕がさらに少なくなっていることを訴え、警鐘を鳴らし続けました。『成長の限界』から30年余りにわたって終始一貫して持続可能な社会形成への努力をモデル分析を通じて強く訴え、全世界に大きなインパクトを与え続けていることが高く評価されました。

一方、クール博士は核医学における断層イメージングの開発に多大な貢献を果たしました。同博士は、1950年代に体内に注入した放射性同位元素の分布を断層撮影する開発実験を世界に先駆けて行いました。同博士が率いるペンシルバニア大学のグループが単光子放出断層撮影装置(SPECT)を開発して生体における体軸横断断層撮影を世界で初めて可能にし、さらに画質を向上させて脳腫瘍や脳卒中などにおける断層画像の臨床的有効性を立証。同博士のヒトの体軸横断断層イメージングの成功はX線CT開発よりも早く、その技術は陽電子放出断層撮影(PET)などを含めたさまざまなコンピューター断層法の開発と発展に大きな影響を与えました。

70年代には、自ら開発した放射性同位元素による脳の再構成断層画像を用いて局所脳血液量を測定。初めて、生体の生理機能を3次元的に測定し、脳生理学、神経科学、行動科学などの核医学への道を開きました。現在、PET、SPECTは臨床において不可欠であり、X線CTやMRIとの画像融合によって統合的画像情報としての有用性が増しています。主として患部の形状を画像化するCTやMRIと患部細胞の悪性度を見極められるPETの特性を組み合わせ、3大成人病と呼ばれる癌、脳卒中、心臓病に加え、老人性痴呆症、統合失調症などの解明や診断、早期発見に用いられています。核医学画像は分子イメージングとして各分野で基礎的、臨床的研究開発が進められてお り、将来一層の発展が期待されています。クール博士は、「核医学的断層画像の父」として、今日の発展への道を開きました。

日本国際賞の受賞について、メドウズ博士は次のように喜びを語っています。「受賞を非常に名誉に思うとともに、大きな責任を感じています。幸い、私は未だ若く、この先数十年はありますから、賞に恥じないよう、より一層努力したいと思います。これまでの25年間に日本国際賞を受賞された皆さんを見てみると、社会・産業の基盤形成やヘルスケア、生活の質の向上などの分野で多大な貢献をされていらっしゃいます。これから25年後に振り返った時に、日本国際賞の受賞者が、この地球上で持続的な暮らしを実現する社会基盤を形成し、平和で自由に暮らせる医療、産業、政府などの制度作りを支援する分野でさらに増えていることを願っています。」

また、クール博士は次のように述べています。「選ばれたことに深く感謝しているだけでなく、今回の授賞対象分野として急速に進歩している分子画像分野が選ばれたことを非常にうれしく思っています。分子画像は、患者の体を傷つけることなく体内での作用を見極められる方法として、新薬や個々の体質に合った治療を開発するカギとなり、また、より多様な情報を提供することで、医療に対して今よりはるかに大きなインパクトを与えるようになると期待されています。」

両博士には、4月23日に東京で開催される授賞式で賞状、賞牌と賞金5,000万円がそれぞれ贈られます。

次の2010年(第26回)日本国際賞の授賞対象分野は、「工業生産・生産技術」と「生物生産・生命環境」の2分野で、現在、世界各国の学者、研究者ならびに有識者に受賞候補者の推薦を依頼しています。

 

受賞者紹介:

デニス・メドウズ博士(Dennis L. Meadows, Ph.D.)

1942年6月7日米国生まれ。
1969年、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経営学博士号を取得。
1988年~2004年、ニューハンプシャー大学システム政策教授、政策社会研究所所長。
2003年にインタラクティブラーニング研究所代表に就任し、現在に至る。

デビット・クール博士(David E. Kuhl, M.D.)

1929年10月27日米国生まれ。
1955年、ペンシルバニア大学で医学博士号取得。
1986年にミシガン大学医学部放射線医学教授に就任し、現在に至る。

*原題:
『成長の限界』(The Limits to Growth)、『限界を超えて』(Beyond the Limits)。
『成長の限界人類の選択』(Limits to Growth: The 30-Year Update)邦訳版は2005年出版。

 

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