歴代受賞者

1985年(第1回)日本国際賞受賞者

情報・通信分野
電子通信工学に対しての貢献

 

写真

ジョン・R・ピアース博士(米国)

スタンフォード大学客員名誉教授
1910-2002
授賞理由

 ピアース博士は1936年カリフォルニア工科大学で博士の学位をとられた後、ベル電話研究所にお勤めになり35年間にわたって同研究所で数々の独創的な研究業績をあげると共に、通信基礎研究部長などの要職を歴任し、ベル電話研究所の基礎研究の推進に指導的な役割を果たした。更に1971年から1982年までは、母校カリフォルニア工科大学電気工学科教授として多くの学生の教育と研究指導に当たり、また同大学のジェット推進研究所の技師長として、宇宙科学に関係した電子通信工学の発展に大きな貢献をした。

 現在、ピアース教授はカリフォルニア工科大学の名誉教授、スタンフォード大学の客員名誉教授として活躍中であり、また音楽・音響コンピュータ研究センターにおいて音楽に関するコンピュータ応用の研究に従事している。

 ピアース博士の研究業績は、電子管工学、マイクロ波通信、通信方法、音声及び音響工学等極めて広範囲にわたっている。それは博士が優れた洞察力と先見性をもって、たえず時代に先がけて、重要な新しい研究分野を見出し、逸速くその分野の研究に着手したからである。しかも博士はそれらの分野の研究において数多くの画期的な業績をあげたばかりでなく、その研究成果の実用化に成功している。

 博士は最初、ベル電話研究所において、真空管の研究に従事したが、その際、細いビーム状の電子流を発生する手段としてピアース電子銃を発明した。この発明はその後マイクロ波通信や衛星通信に欠くことのできない進行波管とか、クライストロンというマイクロ波真空管の実用化に多大の貢献をすることになった。

 また博士は通信衛星の可能性を理論的に解明し、同僚達と協力して通信衛星の実現に非常な努力をした。その結果、1960年にエコー衛星、1962年にテルスター衛星が打ち上げられ、その実験的検証により、今日の衛星通信実用化の端緒を開いたことは周知の事柄である。

 さらに博士はパルス符号変調や多値符号による広帯域ディジタル伝送などの理論的解明を通じてディジタル通信技術の発展にとって先駆的役割を果たすと共にPierce Loopの発明によって今日注目を集めているローカルエリア網(LAN)のパイオニアとしても知られている。

 また、博士は長年にわたって音楽および音響学について研究しているが、特に音声および聴覚に関する工学的ならびに生理学的検討、音楽の解析および合成に関するコンピュータ技術の応用について研究し、先程申し上げたように現在スタンフォード大学においてこの研究に熱中している。

 ピアース博士の独創的な業績は以上述べたほかにも極めて多岐にわたっているが、前にも述べたようにいずれも透徹した先見性と明快な理論的解明に裏づけられており、しかも高度の実用性を具備している3点に大きな特徴がある。

 また博士は数多くの著書や論文を発表しているが、その論旨が明快で文章がお上手で分かり易いことは定評がある。博士の文章のお上手なことは、J.J.Couplingという筆名でSF作家としても知られていることからみても明らかである。このことは学生や後輩に対して多大の教育的効果をもたらしたばかりでなく、博士の研究成果の実用化を容易にすることも大いに貢献しているのではないかと思う。

 以上述べましたようにピアース博士は、理論、実験ならびにその広汎な応用の面で、電子通信工学の今日の発展にとって画期的な貢献を果たしており、第1回日本国際賞受賞にふさわしいものと信ずる次第である。

Google
Japan Prizeサイト内検索
インターネット検索

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

page top