歴代受賞者

1990年(第6回)日本国際賞受賞者

総合化技術-設計・生産・制御技術分野
人工知能という学問の研究の確立とその基本理論の提案

 

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マービン・ミンスキー博士(米国)

マサチューセッツ工科大学教授
1927-2016
授賞理由

 今回の受賞の対象となった業績は、人工知能という学問分野の確立と、人工知能の基本的な理論の提案である。そして、人工知能は、哲学、論理学、言語学、心理学などの人間の知的行為に関する基礎学問を現実の技術において有用性をもつ操作可能な工学理論にまで展開するための方法的体系を提供するものとして、総合化技術の重要な一つの柱として位置付けられる。

 最近、人工知能の研究開発の進歩はめざましく、実用システムが種々の分野で普及しつつある。エキスパートシステムは、設計、生産、故障診断などで広く用いられている。自然言語処理は、機械翻訳やワードプロセッサ、情報管理などで実用化されている。ロボットはますます高機能化、あるいは知能化が進んでいる。この人工知能も実は生まれてから三十数年しかたっていない。

 人工知能という言葉が初めて使われたのは、1956年米国のダートマスで開かれた人工知能会議であり、ミンスキー教授を含む少数の人工知能の先駆者達が、当時やっと使えるようになったコンピュータがどこまで人間の知能に迫ることができるかを議論した。人工知能という学問分野が世界に知らされたのは、1961年にミンスキー教授が学会誌に発表した「人工知能へのステップ」という論文である。その論文では、人工知能の4つの主な課題は、探索、パターン認識、学習、計画を含む問題解決であるとし、その解決のアプローチを示した。このような功績により、ミンスキー教授は人工知能の父とよばれている。

 ミンスキー教授がMITの人工知能研究所を設立して以来、彼の指導のもとで、人工知能の先駆的な研究成果が次々と生み出されるとともに、多くのすぐれた研究者が輩出している。例えば、リスプ(LISP、マッカーシーが発明した人工知能コンピュータ言語)の開発、数式処理、文章の意味の表現、3次元物体の認識、知能ロボット、英語による質問応答などの研究などがある。これらは、いずれもそれぞれの分野の世界の最初の成果であり、これらの研究をきっかけにして、その分野の研究が盛んになったといえるだろう。

 1970年代に入ると、人工知能が扱う対象も複雑になってきた。例えば、自然言語の理解では、それまで扱っていた積木の世界のような限られた対象から、我々の日常の会話のような現実的な世界を対象とするようになった。すると、コンピュータも人間のように膨大な知識をもち、必要に応じて適切な知識を取り出して使わなければならない。知識の重要性をいち早く知ったミンスキー教授は、知識をコンピュータ内に表現し、利用するための枠組みとして、フレームの理論を提案した。この理論は、実際に知識表現と利用のためのコンピュータソフトウェアとして実現され、自然言語処理やエキスパートシステムに広く応用されている。

 1980年代に入ると、人工知能の実用化がさらに加速された。しかし、役に立つシステムを作るためには、それなりの労力を必要とする。そこで、機械自身に学習させることが注目されるようになり、さらに人間はどのように学習しているかという問題が取り上げられるようになった。多くのアイディアが提案されているが、その中にはミンスキー教授が1960年代に研究したニューラルネットワークの理論に基づくものも含まれている。しかしミンスキー教授は、人間の知能は複雑で、少数の理論によって説明されるものではないという立場をとっており、種々の理論が強調して働くことによって知能を実現しようとしている。また、論理的思考だけでなく感情や自我などを含む心(mind)の研究が必要であるとしている。「心の社会」という最近の著書の中で、心は簡単な情報処理をする小さなコンピュータが多数集まってできており、それらが互いに連絡をとりながら動いているという心のモデルを提案した。これにより、また人工知能の分野が大きく広がり、人工知能が近代科学としての心理学とともにますます発展することが期待されている。

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