歴代受賞者

1998年(第14回)日本国際賞受賞者

新材料の設計・創製と機能発現分野
人工超格子結晶概念の創出と実現による新機能材料の発展への貢献

 

前筑波大学学長
1925年生まれ
授賞理由

 江崎玲於奈博士は1969年、1次元の周期的な構造変化を有する人工単結晶、「半導体超格子」の概念を提案した。同博士は、半導体超格子においては、逆格子空間において状態密度が単周期の変調を受ける結果、微分負性抵抗効果など特異な現象が出現すると予言した。また、半導体超格子の実現方法として、薄膜結晶成長の過程において、結晶の合金的組成または不純物濃度を変調させることを提案した。同博士は分子線エピタキシーによる超格子構造の実現に努力し、1972年にGaA1As系超格子において予言通り微分負性抵抗効果を発見した。同博士はさらに、超格子のポテンシャル井戸に生じる離散的エネルギー準位から、隣接する井戸のエネルギー準位への共鳴トンネル現象を予測し、1973年に実験的に確認した。

 超格子に関する同博士の研究が他の研究者に与えた刺激は大きい。第一に、超格子研究の過程で同博士は、変調ドーピング(バンドギャップの大きな領域にドープした不純物に起因する伝導電子または正孔が、バンドギャップの狭い隣接領域にあふれ出す現象)を提案した。この概念を利用して、高速電界効果トランジスタ、HEMTが1980年に実現され、優れた高周波特性を活かし無線通信などに実用されるに至った。第二に、超格子構造(多重量子井戸構造と呼ばれることも多い)を利用したエネルギー状態密度の変化を利用した半導体レーザや、半導体受光デバイスが1980年代に実現され、光通信になくてはならない素子となった。第三に、1980年代後半、強磁性金属と非磁性金属からなる超格子構造において、巨大磁気抵抗効果が発見され、その後これを磁気記録の読み出しセンサとして用いる試みが盛んになされている。

 このように、江崎玲於奈博士による超格子の概念の提案は、半導体から金属にいたる広範な固体結晶材料にわたり、未知の電気的、光学的、磁気的性質の発見、人類の役に立つ応用につながったものであり、今回の賞の対象である「新材料の設計・創製と機能発現」に誠にふさわしい業績である。

 なお、同博士は1973年に、半導体PN接合のトンネル効果の発見により、ノーベル物理学賞を受賞しているが、超格子は同博士のなしとげたもう一つの偉大な業績である。

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