歴代受賞者

2000年(第16回)日本国際賞受賞者

都市計画分野
生態学的都市計画プロセスの確立と土地利用の評価手法の提案

 

ペンシルベニア大学名誉教授
(1920 - 2001)
授賞理由

 19世紀後半から続く人口の都市集中は、今世紀後半になって一層激しさを増し、都市化は世界共通の現象となった。そこでは、無秩序な都市開発に伴い、生命の営みを支える自然環境の破壊が押し進められてきたが、それに対する警告や抗議は、1960年代から社会的告発として行われたものの、都市・地域開発のあり方を根本的に改めるには至らなかった。このような時代にあって、イアン・L・マクハーグ教授は、「人間は自然から離れて存在しえず、その存在も健全なる営みも、自然とそのプロセスを正しく理解することから生まれる」というエコロジーの思想をふまえて、自然の持つ豊かな潜在的能力を活かす生態学的 な都市計画の理論的方法を構築すると共に、適正な土地利用の評価と利用の制約条件を導く具体的手法を提案した。

 1969年に出版された"Design with Nature"は、この分野のバイブルとなっている名著である。そこには、自然とその進化をひとつの創造的プロセスとみなす生態学的視点からみた都市計画の方法論が見事にまとめられている。ここで提示された方法は、都市計画の対象である都市・地域空間を自然のプロセスが支配する環境としてとらえ、環境を構成する生態諸相の要素を価値序列化した上で構造化し、そこで形成された固有の文化を基準として、土地利用の適合性を明らかにするものである。

 マクハーグ教授はランドスケープ・アーキテクトとして都市計画を実践している立場から、生態的環境要素として、気象、地形、地質、水系、土壌、植生、野生生物、歴史記念物などの情報を価値基準によって区分し、価値レベルの空間的分布マップを作成し、それらを重ね合わせるオーバーレイ法によって場所ごとの生態的環境の構造を視覚的に把握することを可能にした。これらの要素は相互に等価ではないので、重ねた結果に総合的価値が生まれるのではなく、そこの生態環境に潜在する価値構造が顕在化されるとし、都市空間の環境的認識方法の実用化に成功している。

 以上のように、生態学的都市計画のプロセスと手法を提案し、実践してきたマクハーグ教授の卓越した業績は、21世紀の都市計画で重視されると思われるエコロジカル・プランニングの方法論を先駆的に確立した点において高く評価される。

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