歴代受賞者

2002年(第18回)日本国際賞受賞者

発生生物学分野
哺乳類の発生生物学研究の開拓

ウエルカムがん研究所客員主任研究員
(1927 - 2007)
ワルシャワ大学動物学研究所所長
1933年生まれ
授賞理由

 アン・マクラーレン(AM)博士とアンジェイ・タルコフスキー(AT)博士は、マウスをモデル動物として、初期胚の培養操作技術を開発し、哺乳類の発生生物学の基礎を築いた。特にキメラ胚の特性にもとづいて、初期胚の細胞が持つ発生運命についての著しい柔軟性を明らかにし、また性決定の機構、性を異にする両親から受けついだ遺伝情報の異なった働き、発生過程における細胞間や組織間の相互作用など、哺乳類の胚発生の基本問題についての解明の道を拓いた。

 発生生物学の過去半世紀における最大の成果のひとつは、哺乳動物の初期発生についての諸原理が解明されたことである。母体内で進行する哺乳類の胚発生を発生生物学的に研究することは、一連の新しい方法の導入があって1960年前後に、はじめて可能になった。それは胎内からとりだした初期胚を培養し、一定の実験を行い、母体に戻し、そしてその胚を発生させて、成体にまで成長させるというものであって、AMとATとがマウスをモデル動物として、ほぼ同時に成 功した。

 AMは、まず着床前の胚を胎外の培養条件下で成長させたのちに、それを再び母胎に戻して発生をすすめることに成功、ATは、2つの遺伝的に異なった胚を胎外で融合させ、融合胚が正常な大きさの個体にまで成長しうることを示して、哺乳類胚の発生についての著しい柔軟性を明らかにした。また、両博士の研究は、個体の性の決定機構、性を異にする両親からの遺伝情報の働きの差異や、発生過程における細胞間や組織間の相互作用など、哺乳類の胚発生の基本問題を解 明するに至っている。

 AMとATによって、数10年前に基礎がうちたてられた哺乳類の発生研究が、今日、豊かな結実を見せていることは、幹細胞の生物学、生殖細胞の生物学、エピジェネティックな遺伝子制御、トランスジェニック動物など、数多くの例にみることができ、今日の大を築くに至ったのである。その成果は、現代の基礎医学の理解において必須のものであり、発生医学や発生工学も、両博士の先駆的な研究なしには成立し得なかったし、誕生前のヒトそのものへの科学的認識を深め ることとなり、人類の福祉への偉大な学術的貢献をなすものである。

 発生生物学上の画期的なブレーク・スルーを提供し、余人をもってかえがたい業績を挙げてきた、AM、AT両博士に本賞を授与することは、誠にふさわしい。

 なお、AM、AT両博士はすでにそれぞれの本国において最高の栄誉をうけているとともに、国際的にも数々の賞を受賞している。

 

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