歴代受賞者

2007年(第23回)日本国際賞受賞者

共生の科学と技術分野
人と共生する熱帯林保全への貢献

 

ハーバード大学チャールズ・ブラード森林学名誉教授
1934年生まれ
授賞理由

 熱帯林は陸上で生物多様性がもっとも高い生態系であるが、最近数十年間で著しく減少・劣化しており、その保全・修復が深刻な環境問題となっている。ピーター・ショウ・アシュトン博士は、半世紀を超える樹木の分類学および森林の生態学的研究を通じて、熱帯林と人間の持続的な共生にむけて不可欠かつ重要な貢 献を行った。

 アシュトン博士は、アジア熱帯林の主要樹木であるフタバガキ科植物をはじめとする樹木の分類と系統、植物地理などで膨大な研究成果をあげ、80年代初頭までにマレーシア植物誌などのかたちにまとめている。また、気候や土壌などの環境要因と熱帯林の分布の因果関係についても、広範な調査研究に基づく資料の解析を行った。これらの研究成果は現在多くの研究者が準拠する体系を構成している。

 これらの研究成果を基礎とした、熱帯林利用の適正化、保全などを目的とした研究における1980年代以降のアシュトン博士のリーダーシップは特に注目すべきである。熱帯林の種多様性とその維持機構、生物生産力を決定する要因、地球の気候と大気の安定化に果たす熱帯林の役割などの解明のため、スミソニアン熱帯研究所の熱帯林研究センター(CTFS)は、全世界の熱帯林18カ所に6,000種3百万本におよぶ大規模な森林調査区を設置して、標準化した手法によって5年に一度の樹木の網羅的解析を行っている。アシュトン博士は、CTFSの共同創設者であると同時に、アジア地域にある11カ所の森林調査区の責任 者として、各国の多数の研究者をリードしながらこのプロジェクトを遂行している。このプロジェクトによって、熱帯林の生物多様性をはじめとする膨大な生態学的知見が地球規模で得られただけでなく、その知見や研究成果を生かして、地域住民の森林利用とその持続性、地域の社会経済的発展と森林保全を両立させる方策の研究へと発展しつつある。これらは、熱帯林の利用や管理・保全の技術を確立し、そのための政策的対応を行う上で不可欠な科学的知見となっている。

 アシュトン博士の研究やプロジェクトは、博士自身が長期にわたって積み上げてきた分類学、生態学などの膨大な基礎的知見に裏打ちされており、危機的状況が進む熱帯林と人間との共生を持続的に可能にするための技法の確立に向け、地球規模で科学的根拠を与える上で絶大な貢献をなすものであり、日本国際賞を授 与するにふさわしいものといえる。

【業績解説文】

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