歴代受賞者

2017年(第33回)Japan Prize受賞者

「エレクトロニクス、情報、通信」分野
先導的暗号研究による情報セキュリティへの貢献

ワイツマン科学研究所 教授
1952年生まれ
授賞理由

 アディ・シャミア博士の業績は、安全・安心な社会の実現に必要不可欠な情報セキュリティにおける最重要な基盤である暗号学や、その背景にある計算量理論、アルゴリズムに広く及ぶ。

 シャミア博士の偉大な貢献は、リベスト博士およびエイドルマン博士と共同でのRSA暗号の発明 (1977) に始まる。RSA暗号は、ウェブアクセスなど不特定多数との安全な通信に適した公開鍵暗号系の最初の具体的な実装であるとともに、データの秘匿化だけでなく電子署名を行うことができるという特長があり、安全性に優れ、今日でも世界中で用いられている。さらにRSA暗号の普及とその安全性の評価は、整数論を始め数学・数理科学における計算量理論の立場からの研究にも大きな影響を与えた。

 その後、博士は秘密分散法 (1979)、秘密情報を全く漏らさない個人識別法 (1986)、ブロック暗号に対する差分解読法 (1990) など、数多くの斬新な概念の提案を行い、同時にそれらの具体的手法を情報理論や計算量理論に基づき提示している。これらは、暗号研究が開かれた学問として確立される過程への絶大な貢献である。秘密情報を分散することで安全に管理する秘密分散法は、暗号化鍵の管理や災害時のデータバックアップにおける重要な技術になると共に、様々な暗号プロトコルの要素技術として用いられ、多くの暗号研究に与えた影響は計り知れない。また個人識別法は、学術的に極めて優れた成果であるとともに、衛星放送の課金システムに導入され成功している。差分解読法は、当時の米国標準であったDES暗号系に適用され、それに代わる安全な暗号を生み出す契機となり、安全な情報社会の継続に大きな社会的インパクトをもたらした。さらにシャミア博士は、暗号装置の消費電力や発生雑音の観測により、内部情報を取得するサイドチャネル攻撃にも早くから着目し、最近ではコンピュータの発する雑音に基づく攻撃に関する重要な成果を発表しており、今後のセキュリティ確保には情報システムの設計全体を考慮しなければならないという重要な示唆を与えている。

 進化する情報化社会の発展には情報セキュリティが不可欠であり、暗号研究を、学問としての確立からその社会的実践までを牽引し続けているアディ・シャミア博士の業績は、「エレクトロニクス、情報、通信」分野における貢献を称える2017年日本国際賞にふさわしいものと考える。

Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

受賞者

Japan Prize 30年の歩み

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