ストックホルム国際青年科学セミナー

1993年派遣学生 野原レポート

写真野原 千歌子
 

 私にとって今回のSIYSSプログラムヘの参加は、初めてのヨーロッパ旅行となった。北欧では、見るものがすべて新鮮な驚きにつながった。空港に着いて辺りを見回すとみな背が高い!座っているときはあまり感じなかったが、立ってみると男性だけでなく女の人も見上げるような高さで、ほとんどの人が金髪、青い目だった。次の日、ストックホルム市内を散歩していると、中世の頃のままの石造りで美しい彫刻が施してあるような華やかな建物が沢山あった。それらの建物にはオフ.イスやお店が入っていて現在も街の中心で堂々たる存在感を示していた。また、いたる所に石像や銅像があったのも印象的だった。スウェーデンは200年近く戦争をしていないので、昔のもの、貴重なものが行き届いた手入れによってきれいに残されている。もう一つ驚いたのは、日が短いこと。朝8時に起きても外は真っ暗で“夜景”を見ることができる。晴れた日の一番太陽が高い正午でも曇った日の午後のようなちょっと薄暗い感じで、午後4時には日が暮れる。気候は覚悟していたほど寒くなく、0℃前後を行ったり来たりだった。第一印象だけでも盛り沢山だった。

 ストックホルムに着いた翌々日からSIYSSが始まった。自己紹介を兼ねたディナーの次の日は日曜日だったので、公園でスケートし、スカンセンというアミューズメントパークで遊んだ。初日の活動が遊びだったので、みんなと仲良くなることができた。明くる日の月曜日、ウプサラまで遠出した。ウプサラは、ウプサラ大学を中心とする大学都市であり、また歴史の深い街だった。素晴らしい大聖堂があり、司教の家もあった。大学の建物は芸術そのもので、街中に散らばっていた。また、各学部でいろいろな博物館を公開しており、恐竜の骨や化石、250年前の蝶の標本、動物のはく製などを見せてもらった。その後、地元のサイエンスクラブの学生たちとディナーで合流し、クラブ活動の様子などについて語らい、一緒にホログラムを作る実験もした。火曜日はカロリンスカ研究所へ行った。講義を3つ聞いてから、3G(重力の3倍)を体験したり、足の筋力を測定したり、足の血行を悪くする実験をした。そして、ノーベル文学賞受賞者のToni Morrisonの講演を聞いた。このあと水族館へ行った。室内で熱帯地域の植物、魚、光、水が見事に調和して完全な系を作っていた。水曜日はRoyal Swedish Academy of Scienceで、ノーベル物理学賞のR. HulseとJ. Taylor、化学賞のK. MullisとM. Smithの講演を聞いた。マリス博士のスピーチはとてもユニークだった。この夜、ノーベルコンサートヘ行った。オーケストラとBarbara Hendricksの美しい歌声が心に残った。次の日の朝、王宮の中の一部を見学した。つい数年前まで王家が住んでいたそうだが、あまりに美しい家具、じゅうたん、そしてあまりに豪華なシャンデリアにみな溜め息した。それからKTHという研究所を訪問し、講義というよりはディスカッションのような形で各国の交換留学や教育などについて話し合った。このときに限らず、このセミナーに参加している間に、いろいろな人と科学、教育、文化などについて話す機会が沢山あり、とても興味深かった。日本に大きな関心を持っている人が大変多く、様々な 分野について質間された。これは“世界の中の日本”の立場や役割について考える良いきっかけとなった。

 12月9日の夜から、いよいよこのセミナーのクライマックス、一連のノーベル賞のセレモニーが始まった。まずノーベル財団が主催するレセプションに出席した。会場では各賞の受賞者とその家族友人、ノーベル財団関係者、各国の大使など、大勢の人がシャンパンを片手に語らっていた。私たち学生もこの人たちに混ざって話す事ができた。私はマリス博士とテイラー博士と少し話したが、2人とも気さくで話しやすく、本当に受賞者を目の前にしているとは信じられない位だった。翌日、ノーベル賞の授賞式があった。昨日話した人が今日世界一名誉ある賞を受けている、と思うと不思議な気持ちになった。この後場所を移動して市庁舎で晩餐会があった。大勢のウェーターが列をなして、歌いながら食事を盛って歩いたり、民族衣装に身を包んだ女の子が踊ったり、Barbara Hendricksのミニコンサートがあったりと、全体がショーのようになっていて素晴らしい晩餐会だった。

 食事が終わると、別のホールで舞踏会が始まった。色とりどりのイブニングドレスをまとった女性と燕尾服の男性が手を取り合って華麗にステップを刻んでいた。私も振り袖で動きにくかったけれど、SIYSSの学生たちと愉快に習ったばかりのワルツやフォックストロットを踊った。この舞踏会は夜中の1時まで続いたが、終わりのほうになってくると、楽しかったノーベル週間が終わってしまい、新しく友達になった人達もそれぞれの国に帰ってしまう、と思うと寂しい気持ちだった。

 今回のSIYSSに参加できた事は、ノーベル賞の受賞者と対面できた事も素晴らしい事だったが、世界各国の若い学生たちと様々な交流を持つことができ、一緒に遊び、学び、意見交換できたことは大変貴重だったと思う。私のセミナー参加を可能にして下さった皆様、向こうで楽しい企画をしてくれた学生たち、そして新しく友達になっ た人達に心から感謝したい気持ちでいっぱいだ。


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