ストックホルム国際青年科学セミナー

2010年派遣学生

kataoka片岡 泰之 
東京工業大学大学院理工学研究科
 

 新たに二名の日本人ノーベル賞受賞者が誕生した2010年12月。私は世界18カ国から選抜された25名の若手研究者と共に、ストックホルムで開催された''Nobel Week''に参加しました。日本大使館に招待された昼食会や晩餐会の前日の祝賀会等の中で、ノーベル賞受賞者方々から直接頂いた貴重なお言葉は今でも心に刻まれています。また、圧倒的な研究成果や独自の研究哲学を持つ他国の若手研究者と交流し、様々な刺激を受けてきました。この経験を機に、これからの研究者人生の中で以下の3つの心構えを大切にしていこうと思っております。

 一つ目は「研究を見つけること」です。化学賞を受賞された根岸先生は、「これからは学術分野を横断的に俯瞰する広い知見を持ち、新しい研究分野は自分で見つけることが必要である」とおっしゃられました。新分野でパイオニアとなる研究を見つけるには、日々の生活から様々な分野にアンテナを張り、大胆な視点と発想を持つ心がけが重要であると改めて感じました。また、同じく化学賞を受賞された鈴木先生は今の若者に対し、「自分の道を探求する努力が足りていない」と指摘されました。自分が進む道を見つけるには、可能性を浅く広めるだけでなく、深く狭めることで一つのことに無我夢中で突き進む姿勢の重要性を感じました。実際、突出した研究成果を出しているアメリカ代表は、数学を極める、宗教を知る、新聞を読む、この3つの事以外には熱中しないという哲学を持つことで数学を極めていました。私は、無我夢中になれる研究を見つけるために、「広げる努力」と「捨てる勇気」の両者の重要性を意識しています。

 二つ目は、「研究を楽しむこと」です。己の内側から湧く知的好奇心を素直に探求すること、独創的なアイディアを実践して形にすること、これらは全ての受賞者の方々が口を揃えておっしゃられていたことでした。こうした研究者にイメージされる素養は、大人になるにつれて変化する周囲の環境によって実践することが難しくなると感じています。年齢や立場など、周囲の環境が劇的に変化を続けたであろう長い研究生活を経てもなお、知的好奇心の探究を純粋に楽しんでいる先生方の姿を目の前にし、自分に素直な研究者に憧れました。また、物理学賞を受賞されたGeim先生のお話からは、遊び心を持つ心の余裕も大切だと感じました。

 先生はイグノーベルを受賞された過去の研究で、成果を示すために遊び心から蛙を浮遊させるという一見奇異な実験をされたそうです。その結果、予想以上に研究成果を老若男女に知ってもらえたそうです。忙しい研究生活の中でも、心に余裕を持って遊び心は忘れないようにしたいものです。自分の心の声に素直であることと遊び心を持つことで、「研究を楽しむ」研究者でありたいと思いました。

 三つ目は、「研究を発展させること」です。根岸先生は、早期に語学力を鍛錬し、世界に飛び込む気概を持つことの重要性を力説されておりました。先生が米国博士留学を機に世界最高の研究環境で修行されたように、自分もグローバルに挑戦するチャンスをものにし、世界の研究者に認められる成果を出したいと思っています。また、研究と社会のつながりを作り、研究成果を広く社会に普及させる努力も必要だと感じています。鈴木先生と根岸先生は、クロスカップリングがまだ基礎研究の段階であった数十年前も前から、産業界での応用例を考えられていたそうです。先生方のように基礎研究が世界を変えるまでの長期的なビジョンを持てる研究者でありたいと思いました。

 現在私は、企業研究者として大学の研究とは異なる新分野に挑戦しており、様々な苦難に直面しておりますが、本セミナーで得られた研究者としての心構えを忘れずに邁進しております。最後になりましたが、今回の栄誉あるノーベル賞の諸活動に参加させていただくチャンスを下さった国際科学技術財団、セミナーの運営をしてくれたノーベル財団の学生組織、そして家族や友人の支えに感謝いたします。


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