ストックホルム国際青年科学セミナー

2011年派遣学生

SIYSS Tanaka田中 顕 
アムハースト大学生物医学科
 

 2011年12月11日、ストックホルムからの飛行機に乗り、機内で配られたスウェーデンの新聞を開くと、昨夜のノーベル賞授賞式の様子が10ページ以上に渡り詳しく報道されていました。各受賞者へのインタビュー記事、ノーベル賞授賞式での様子などを読み進むうちに、世界18カ国24名の才能溢れる若手科学者たちと共に過ごしたこの1週間の思い出が早くも思い出されました。改めて、忘れられない貴重な体験だったと実感しました。

 私は「ストックホルム国際青年科学セミナー(Stockholm International Youth Science Seminar: SIYSS」という、ノーベル賞受賞行事に関連して催されるプログラムに、世界中から選抜された24名の若手科学者の一人として日本から参加させて頂きました。このプログラムの目的は、世界中から集まった才能溢れる若手科学者たちが、一連のノーベル賞関連行事に参加しながら交流することで、研究への興味関心を更に広げるというものです。このように書くと非常に難しいセミナーのように感じられてしまうかもしれませんが、言葉では言い尽くせないほど充実した、とても楽しい1週間でした。振り返ってみると、生理学医学賞を受賞されたブルース・ボイトラー博士と私の癌医学研究プロジェクトについて行った研究ディスカッション、ノーベル賞授賞式や晩餐会への出席など、どれも他では経験出来ない印象的な出来事でした。その中でも特に、若手科学者たちとの知的交流について報告させて頂きたいと思います。

世界中から選抜された若手科学者24名の研究における実力は圧倒的で、「世界という壁の高さ」を感じました。参加者の研究分野は多岐に渡り、医学、工学、環境化学、コンピュータサイエンス、理論物理、応用数学などと幅広いものでした。その中でも特に私が印象に残っている彼らの研究の一部を取り上げたいと思います。

アルゼンチン代表: シアノバクテリアの富栄養化解析による、シアノトキシン湖沼浄化研究 (環境化学)
南アフリカ代表:前腕切断患者を対象とした、従来にない画期的な義手の開発 (医学工学)

 どの研究発表も素晴らしかったのですが、私は特にアルゼンチン代表の研究発表に心を打たれました。10代で始めた彼の研究プロジェクトは現在、湖沼浄化プロジェクトにおいて国家行政を動かすほどの影響を与えています。彼がこの研究を始めたきっかけは、彼がいつも泳いでいた地元の湖が突然汚染され始め、周囲の誰もが何とかしなければならないと思いながらも誰も行動を起こさない姿を見て、「自分が何とかしなければならない!」と強く心に感じ、独学で環境化学を勉強して湖の汚染原因を詳細に突き止めたのです。その後その研究成果を行政に持ち込んだところ、彼の熱意と詳細な研究成果に心を動かされた市長が、この汚染対策を本格的に主導するプロジェクトを立ち上げたそうです。

 私は彼の研究発表を聞きながら、科学がもたらす高揚感に包まれたのを感じていました。私の専門は医学ですので彼とは分野が異なりますが、「自らの研究で、世界を少しでも良い方向に変えていこうとする姿勢」に分野を超えて感動し、その姿勢をこれからの自分の人生に生かしていこうと考えました。

 また彼ら若手科学者との交流の中で学んだことは、①高いプロフェッショナル意識、②非常に高度な専門性の確立、③独自のストラテジーの構築、③科学は社会を良くするための「ツール」という考え方でした。彼らは自らの能力に確固たる自信を持ち、鋭い科学的仮説を作り上げ、その仮説を立証する独創的なストラテジーを考え出すことによって、「自分が科学研究というツールを用いて社会をより良いものにしていく」という考え方を皆持っていました。これからの人生を考える上でとても貴重なものになりました。

 最後となりましたが、このような大変貴重な機会を与えて下さった国際科学技術財団の皆様、世界中から集まった才能と情熱に溢れた24名の若手科学者たちに、心からの感謝の気持ちを述べさせて頂きたいです。ストックホルム国際青年科学セミナーでは非常に多くのことを学んだと同時に、また今回の出会いを大切にしながら、「科学」という世界を通して社会に貢献出来る存在に将来なりたいと自らを見つめ直す貴重な機会となりました。

siyss2011

ノーベル医学生理学賞受賞者、ブルース・ボイトラー博士と

 

 

 


Japan Prize歴代受賞者による社会貢献

ストックホルム
国際青年科学セミナー

Japan Prize 30年の歩み

page top