ストックホルム国際青年科学セミナー

2014年派遣学生

siyssasuka盤若 明日香
京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻
 

 三年前に見た、ノーベル賞晩餐会を終えて市庁舎を出てきた人々の興奮冷めやらぬ、満足感に溢れた幸せそうな表情は今でも鮮明に思い出すことが出来ます。ストックホルム大学留学中に晩餐会からアフターパーティーへの送迎係のボランティアとして参加していた私は、その時強く、外からではなく会場の中で同じ感動を味わいたかったと思いましたがまさかその夢が実現する日が来るとは思ってもいませんでした。

 私はこの度2014年12月4日から11日まで国際科学技術財団に派遣していただきストックホルム国際青年科学セミナー(SIYSS)に参加しました。世界18か国から集まった24人の若手科学者が、自分たちの研究発表をはじめ、ノーベル賞受賞者の講演やレセプション、授賞式、晩餐会などの諸行事に参加しながら一週間をホステルで共に過ごしました。全てが夢のような忘れられない思い出ですが、物理学賞を三名の日本の先生方が受賞された年に派遣して頂いたことは非常に光栄でした。

 今回のプログラムの中で最も心に残ったことは科学の素晴らしさを実感できたことです。医学生理学賞選考委員であるヨーラン・ハンソン先生に、「科学の素晴らしさの一つに、国境を越えて色んな人と出会い、繋がることができることがある。科学も芸術や音楽と同じように人と人が繋がることができるツールなんだ。」ということを教えて頂きました。初めはあまり実感がわきませんでしたが、現地の高校生に自分たちの研究発表をする際、学生たちの目がキラキラしていて、心から興味を持って聞いてくれているのを感じた時に、自分の研究、研究発表を通してこんなにも多くの人と繋がれることができるのは本当に素晴らしい!楽しい!と感じ、仰ったことを自身で体感できたことに、より一層嬉しさと感動を覚えました。また、参加者やコーディネーターが自分たちは科学者であるという自覚を強く持っていたことにも驚かされました。パンデミックが起こった際、認可前の新薬を使うべきか等を問う倫理セミナーや普段の会話を通じ、研究に携わる者が社会の中で担う役割、社会に与える影響というものを常に考え、責任を感じながら日々過ごしていることを実感したことは貴重な経験となりました。今後は科学という大きな枠組みの中にある素晴らしさ、責任を意識しながら研究に携わりたいと感じました。

 受賞者とお話しさせていただいた中では、化学賞受賞者のエリックベツィグ博士が、サイエンティストは皆こどもであって、決して好奇心探究心を忘れてはいけないと仰ったことが印象に残っています。アカデミアの世界に嫌気がさして二度も離れた経験のあるエリック博士のように、ある意味自分の感情に素直に、純粋に自分が楽しいと思うことを追求する姿勢には心を動かされました。好奇心を忘れない姿勢から、物事について考え、疑問を持つことの大切さを改めて学ばせて頂きました。また、医学生理学賞受賞者のジョン・オキーフ博士は若手科学者に向けて幅広い事柄に関心を持ちなさい。と仰っていました。他国の参加者達の多くは高校卒業したてで、在学中からプログラムや自らアプライするなど研究をはじめ、コンテストで優勝したような並外れた学生ばかりである点にまず驚かされましたが、研究においても純粋に面白いと思うことを追求しているばかりでなく、専門外の話題にも関心や疑問を抱き、自分の意見を持って堂々と主張する力がありました。自国の経済や社会についても熱く語れる自分より若い彼らを見て、間違っていてもいいから自分なりの意見を持つこと、好奇心をもって普段馴染の薄い分野にも関心を持つことの重要性を思い知らされました。

 また、式典やレセプションでお話を聞かせて頂くうち、ノーベル賞受賞者の人柄に触れ、また各国の参加者、コーディネーターたちの思いやりや優しさに触れ、科学者としての一面ではなく人として感動しました。レセプションの終盤にお話を聞かせて頂いたエリック博士は、二時間近く色んな方とお話しし、写真やサインを頼まれ続けお疲れだろうと私達も遠慮気味にお願いすると、笑顔で、そのためにここにいるんだからと快く引き受けてくださったことがとても嬉しく心に残っています。また、プログラムの途中体調が悪かった時に、そういうときのために友達はここにいるんだからねと温かく手を差し伸べてくれた参加者の言葉にも心を動かされました。一人の科学者である前に、一人の人間として思いやりを忘れない優しい人になりたい。と強く思う瞬間でした。

 一週間という短い時間でしたが、多くの出会いがあり、多様な考えに触れ、自身について、日本について考え直す大きなきっかけとなる刺激的な一週間でした。今後、今回感じた科学の素晴らしさを伝えていけるように、また科学に携わる者の責任、自分の意見を積極的に発信する重要性を認識しながら日々研究生活を充実させていきたいと感じました。

 最後になりましたが、今回たくさんの方にお世話になりこのような素晴らしいプログラムに参加させて頂けたことに感謝の気持ちでいっぱいです。選考、派遣してくださった国際科学技術財団の皆様、現地で最高のプログラムを作り出してくださったコーディネーターの皆さま、出発まで研究発表においてたくさんのご指導、アドバイスを下さった研究室の先生方、先輩方、皆さま、大学関係者の皆さま、たくさんの刺激を与えてくれた参加者達、支えてくれた友人、家族、お世話になった全ての方にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。

siyss04

ノーベル化学賞受賞者、エリック・ベッツィヒ博士と

 

 

 


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