ストックホルム国際青年科学セミナー

2014年派遣学生

kaneko金子 光顕
京都大学大学院工学研究科電子工学専攻
 

 スウェーデン青年科学者連盟が毎年ノーベル賞週間に合わせて「ストックホルム国際青年科学セミナー(Stockholm International Youth Science Seminar, SIYSS)」を開催しています。今年は18ヶ国から24名の研究者を志す18~24歳の若者が各国の代表として選ばれ、ノーベル賞関連の行事に参加しました。私は日本代表の一人として参加する機会を得ましたので、ここに報告させて頂きます。
日本代表に選んで頂いたことを研究指導をしていただいている先生にお話しした時に、(その時はまだ物理学賞発表前でしたが)「青色LEDは毎年候補になっている、今年こそ受賞するのではないか」とおっしゃっていました。先生のお言葉が現実になり、赤﨑先生、天野先生、中村先生の3先生が青色LEDの開発で受賞となり、私自身、日本人として、また、窒化物半導体の研究をさせてもらっているものとして、大変嬉しく、また、緊張してのSIYSS参加となりました。

 SIYSSでは、ノーベル賞関連の行事として、ノーベルレクチャー、ノーベルレセプション、授賞式、晩餐会、ナイトキャップに参加させていただきました。物理学賞の3先生のノーベルレクチャーを聞き終え、SIYSSの他国の参加者に感想を聞くと、非常に分かりやすく、研究の苦労や社会へのインパクトがよく分かったと大変好評でした。化学賞のレクチャーでは、エリック博士のエールが心に響きました。エリック博士はかの有名なベル研に所属していたものの、アカデミックの道をあきらめ退職し、企業に勤めるも作製した装置が全く売れず会社も辞めてしまったという経歴をもっています。その後ベル研退職直前に思いついたアイディアを具現化し、化学賞を受賞されました。レクチャーの終わりに、リスクをとり、挑戦したが、失敗してしまった全ての人に対して、努力したこと自体に意味があることを忘れてはならないとおっしゃっており、研究で新しいことに挑戦する心を忘れてはならないと気持ちを新たにしました。

 ノーベルレセプションではノーベル賞受賞者と直接お話しをする機会があり、大変貴重な経験をさせていただきました。天野先生と直接お話しした際、ノーベルレクチャーで天野先生がおっしゃっていた「低温バッファー層を見つけるまでに1500回以上もの失敗を重ねた」ことについて、師である赤崎先生から失敗を続ける中どんなお言葉を頂いていたのかを伺いました。天野先生は「君はいつもすりガラスのような結晶をもってくるね(良い結晶ができると表面は鏡面になるため、いつも悪い結晶を持ってくる、という意)」と言われたのが一番印象に残っているとおっしゃっていました。研究がうまくいかない中でもあきらめずに志を持って研究に励んでいた大学院生の天野先生の姿を想像でき、その努力の結果がノーベル賞受賞につながったことを考えると、感慨深いものがありました。SIYSS参加者のプロジェクトは物理学、生物学、数学と多岐にわたっているのですが、SIYSS参加者全員が天野先生にお話しを伺おうと押しかけている姿を見て、彼らの積極的な姿勢を見習うと同時に、分野を超越するノーベル賞の威厳を垣間見ることができました(その際、サイン攻めを快く受けていただき、天野先生の優しいお人柄に触れることもできました)。

 SIYSSでは、ノーベル賞関連の行事の他に、スウェーデンの高校生1500人に対して、参加者が取り組んでいるプロジェクトを発表するイベントがあります。学会のような形で、ポスターと5分間の口頭発表がありました。会の進行こそ学会と似ていたものの、自分の研究分野に携わっている方への説明とは大きく異なり、高校生に理解してもらうように説明を組み立てていくのはこれまで経験がなく大変でしたが、とても良い機会となりました。発表後、材料科学を専門とする参加者に、難しい概念を上手く説明できていたといってもらい、胸をなでおろしました。SIYSS参加者同士でお互いのプロジェクトについて討議する時間は特別設けられていなかったのですが、移動時間や空き時間に自然とお互いのプロジェクトについての討議が始まり、世界各国の研究者を目指す同世代の方々との交流は大変意義深いものでした。大学院生の私は年長の部類で、現役高校生や高校を卒業して間もない人もいて、彼らが自分の研究課題を持って、真剣に研究に取り組んでいる姿に驚きました。その中でも、南アフリカ代表の参加者のプロジェクトは抗菌性パウダーを用いることで鳥小屋清掃時の水の消費量を減らすというもので、水が貴重な資源であるアフリカの生活に直結した課題に取り組んでいて、研究は人の生活をより良くしていくものだと再認識させられました。

 SIYSSオリジナルのイベントとして、倫理セミナーも開かれました。SIYSS参加者を3つのグループに分け、それぞれのグループに与えられた研究倫理に関するトピックについて話し合い、結論をセミナーで発表するというものでした。私たちのグループでは、「伝染病が世界流行した際、研究開発途中の認可されていない薬の使用を許可してもよいか」という議題について話し合いました。処方する本人の許可を得れば良い、という一応の結論がでたのですが、議論時にはお互いの意見が衝突し、なかなかまとまりませんでした。セミナーでは倫理を専門とするスウェーデンの大学教授に出席いただいたのですが、薬の説明義務を怠った過去の事例を引き合いに、単純に患者のそのときの意思に任せるのは危険だと意見を頂きました。生命倫理に限らず、倫理に正しい解は無いということを理解しつつも、成熟した研究者になるためには考え続けなければならないと思いました。

 SIYSS参加は、研究者として多くのことを学び、かけがえのない経験となりました。SIYSS参加者は皆個性的で、聡明な彼らとの出会いは刺激が強く、彼らに負けない研究者になるべく努力しようと決意しました。私たちをストックホルムに集めてくれた科学に感謝し、また、国籍や人種によらない科学の素晴らしさを実感するノーベルウィークとなりました。今回派遣していただいた国際科学技術財団、並びに1年もの間準備に時間を割いていただいた現地コーディネーターの方々、日ごろお世話になっている研究室の先生方、メンバーにこの場を借りて御礼申し上げます。

siyssnakamura

ノーベル物理学賞受賞者、中村博士と

 

 


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