ストックホルム国際青年科学セミナー

2015年派遣学生

siyss2015_ohashi大橋 匠
東京工業大学大学院 総合理工学研究科 博士課程1年
 

【緒言】
 世界各国から25名の若手研究者が集うストックホルム国際青年科学セミナー(SIYSS)に参加した。非常に短期間ではあったが、多様なバックグラウンドを持つ学生と過ごせた9日間はとても刺激的であり、多くのことを学ぶことが出来た。SIYSS参加にあたり、我々を派遣してくださった国際科学技術財団の皆様やSIYSSを運営したUnga Forskareの学生に心から感謝を申し上げたい。感謝の意を込めて、以下に、参加動機および濃密な9日間で学んだこと、そして本セミナーの経験を活かした今後の展望について述べる。


【参加動機】
 ある英語科の教員との出会いをきっかけに、自らの世界が広がった経験から、自らの経験を全て還元して幅広い選択肢を学生に提供できる教員になることを目指していた。大きな衝撃を受け、目指す職種が変わったのは、東工大学部4年次にアジア最貧国の1つ、バングラデシュの水道公社にて3ヶ月間のインターンを実施したときである。日本の代表として派遣されたのだから、何か良くして帰ろうと意気込んでいたのだが、次第に何もできないことに気が付き始めた。様々な問題の根は深く、私に何か1つでも強みが必要だと感じた。すなわち、ただ単に選択肢を示すだけではなく、自らの考えを基に未来を描き、それを広く世界に浸透させ還元していく力が必要だと感じた。この気付きが、「科学技術」と「教育」を軸に仕事をしようと志すきっかけとなった。そのような私がSIYSSに応募した理由は、科学技術に関する多くの刺激を受けることはもちろん、教育に携わることを念頭において、他国の優秀な学生と濃密な時間を過ごすことにより考え方の幅を広げ、また、コーディネータとして参加するスウェーデンの学生の組織運営方法やモチベーションを学ぶためであった。


【若手研究者との交流から】
 参加当時23歳の私は、25名の参加者の中で最年長であった。参加者の大半が18,19歳であるにも関わらず、国際的な教養に非常に長け、自らの意見をしっかりと持ち発信できる力には驚嘆し、彼らがどのように自らの意見を積み上げてきたのかを考えさせられた。それを感じ取ったのはSIYSSイベントの1つであるEthics Seminarだ。非常に難しい問題であり、また時間の制約もあったため多少意見が荒削りではあったが、一人ひとりが自らのバックグラウンドや知識から、緻密に意見を構築しようとする姿勢にとても驚かされた。それらは、常日頃から様々な出来事に対してアンテナを張りながら自分の中で咀嚼している結果であるように感じた。世界の潮流に関心を持とうとしていたのにも関わらず、私の興味関心の範囲はまだ非常に狭く、より広範な視野を持つ必要があることを実感した。

【ノーベル賞関連イベントから】
 SIYSSでは非常に光栄なことにノーベルレセプション、授賞式、晩餐会などノーベル賞関連の多くの行事に参加することが出来た。その中でもノーベル賞受賞者の講演がとても刺激的であった。どのような経緯を辿って、どのような研究をしてノーベル賞受賞に至ったのか、時にユーモアを交えながら分かりやすくお話されていた。ここでは、個人的に非常に印象的であった、文学賞を受賞したSvetlana Alexievich氏の講演について取り上げたい。個人の感情を描くことにこだわった彼女は、様々な場所を歩き渡り、少しずつ取材を重ねることで多様な声を集めたそのエピソードを語ってくれた。このことは、途方もないステップを重ねた果てにこそ、素晴らしい価値を生み出せるという気付きを与えてくれた。全ての受賞者に共通し、そして研究者として我々も当たり前としなければならない素養かも知れないが、小さなステップを確実に積み重ねていくことの重要性を再認識させられた講演だった。前述したとおり視野が狭いため、このような機会がなければ文学賞に関して見向きもしなかったかもしれない。当たり前のことではあるが非常に重要なことを気付くことができたのは、本当に幸運だったと感じる。

 日本大使館主催のレセプションに参加した際に、ノーベル医学・生理学賞を受賞された大村智先生とお話する機会があった。前述のような経験から、新興国での教育に興味があった私は、アフリカなど多くの国々のために研究なさっている大村先生に、海外の人々の重きを置いたプロジェクトを実行するために最も重要なことは何か尋ねた。彼は「自分1人じゃだめ。周りの人との縁やつながりが大事」と仰っていた。人とのつながりこそが成果を育む土台であり、人とのつながりに生かされていることを強調されていて非常に印象に残った。この大村先生とのお話から、1人で実行できることはあまりにも小さく、大きな目標に対してどのようなポジションから関わっていくべきなのか明確にする必要があることを感じた。そして、この気付きはどのポジションから(研究やガバナンスなど)大きな目標である新興国での教育に携わっていけばよいのか考え始めるきっかけとなり、自らのキャリアを考えていく上で大きな指標となった。


【結言】

 ノーベル賞受賞者や世界各国から集まった若手研究者との会話から多くの刺激を得て、また多くのことを学ぶことが出来た。さらに、ノーベル賞関連の行事に参加させていただいたときには非常に感動し、特に授賞式にて大村先生・梶田先生が国王から表彰されるときは鳥肌が立ち同じ日本人として誇りに思うばかりだった。このような素晴らしい機会を頂けたことに感謝し、また学んだことを活かしながら目標に向けて一歩一歩積み上げて行きたい。


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ノーベル生理学・医学賞受賞者、大村博士と

 

 


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